わたしたちがみている夜空は,たくさんある夜空のひとつでしかない。
quote:すばる望遠鏡などで蓄積された天体の観測データを,インターネットを通じていつでもどこでもみられるようにするバーチャル天文台構想が進行中だ。「データは人類全体の財産。共有してよい結果を出そうという機運が高まっている」と国立天文台助教授は話す。
だれかの頭のなかにしかない知識,には意味がない。発表せずに敬われる知識もない。発見を生み出すデータも同様で,どこかのローカルのコンピュータにあったって,それによってあしたは創られない。すべてのデータ,ウェブページ,テキスト,オーディオ,ビデオは,パブリックであること。人種,住む地域,言語,国家的規制などによって,制限を受けないこと。これが,すべての規範である。
空はひとつぢゃない。リアルでみあげる夜空は,ワイヤードの夜空のなかにも存在している。そして,ワイヤードの夜空はほかの無数の夜空も内包している。北にある星が南にあり,西から昇る月が東へ向かう。N49 白色矮星はRGBのユラギを超え,ベガとアルタイルをグーグルに導く。煌めきのまぶしさに手をかざすと,その指のすき間からみえる,もうひとつの夜空がワイヤードを覆っているのが。
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